光の正体を探る2:光の波動説を後押しするヤングの干渉実験

「光とは一体どういうものなのか?」という一見単純な問題は、長年にわたり多くの物理学者の頭を悩ませてきました。

17世紀〜19世紀にかけて、この問題が議論されていた頃、光の正体に関して、2つの説が提唱されていました。

1つは「光とは、さまざまな色の粒子の集まりである」という考え方です。

これは、万有引力(重力)の法則を打ち立てたことで知られるニュートンも支持した説であり、17世紀にはこの「光=粒子説」が広く信じられていました。

そして、もう1つの主張が「光=波動説」です。

これは、17世紀ごろにはあまり支持されていなかった説ですが、18世紀から19世紀にかけて一気に日の目を浴びるようになります。

そのきっかけとなったのが、イギリスの物理学者トマス・ヤングが行った二重スリット実験です。

今回は、このヤングの二重スリット実験の概要と、そこから得られた「光を波として考えなければ説明できない」ことを示す科学的証拠を紹介します。

まず、「スリット」とは細いすき間のことで、「二重スリット」とは、ごく近い位置に平行に2本並んだ細いすき間を用意したものを指します。

「二重スリットに光を当てると、どんなことが起こるのか?」を調べたのが、ヤングの二重スリット実験です。

ヤングは、二重スリットの先にスクリーンを設置し、そこに映る光の像を調べました。

仮に「光とは、粒子の集まりである」と考えると、スクリーンには、どのような像ができるでしょうか?

光が粒子であるときには、最初のスリットを通った光の粒子は、そのまま直進すると考えられます。

そして二重スリットに到達したとき、それぞれの粒子は2つのスリットのどちらか一方を通り抜けます。

したがって、「光=粒子」と考えると、スクリーンには、2本の帯状の明るい領域が映し出されると予想されます。

しかし、実際にスクリーンに映し出されたのは、明るい部分と暗い部分が交互に並んだ光の縞模様でした。

スクリーンに縞模様が映し出されたという事実は、光が最初のスリットを通過した後、そのまま(細い束のまま)直進するのではなく、波のように広がっていることを示しています。

さらに二重スリットを通過した2つの光の波が、ある場所では強め合い、別の場所では打ち消し合うことで、明るい部分と暗い部分が交互に並ぶ干渉縞が生じます。

これらは「光が波として振る舞っている」という強力な証拠だと考えられます。

この実験を契機に、「光の粒子説」が主力だった頃から一変して、「光の波動説」が信じられるようになっていきました。

しかし、この「光の波動説」もすべての現象を説明できるわけではありませんでした。

「ヤングの実験で、光は波動と考えられるという証拠が出たのなら、光は波動なのか」と思うかもしれませんが、実は、そうとも言い切れない事情がありました。

そもそも、「光は波である」と言うときの「波」とは、そもそも何を指しているのでしょうか?

私たちが「波動」と呼ぶものが何なのかを考えると、この「光=波動説」の問題点が浮かび上がってきます。

そこでまず、「波動」とは何かを整理してみましょう。

例えば、池に石を投げ入れると、水面が揺らいで波が広がっていきます。また、ゴムひもを強く引っ張って離すと、ひもの中を波が伝わっていきます。

さらに、バイオリンの弦を弾くと、弦が振動して音が出ます。音もまた波の一種なので、弦の振動が空気中に波として伝わっていると考えられます。

このように「波」は様々な場面で生み出すことができますが、これらには1つの共通点があります。

それは「波を伝える媒体が存在する」ということです。

水面が揺らいで波ができているときは「池の水」が、ゴムを引っ張って離したあとに波ができているときは「ゴム」が、音が鳴っているときは「空気」が振動しています。

つまり、水面の波は池の水を、ひもの波はゴムを、音波は空気を媒体として伝わっているのです。

したがって「光=波動」と考えるなら「光を伝える媒体は何なのか?」を解明する必要が出てきます。

「光=波動説」を唱えた物理学者らは、その媒体を「エーテル」と名付けました。

「エーテル」自体を直接観測することはできなかったものの、「エーテルと呼ばれる謎の媒質がこの世界を満たしていて、光とは、そのエーテルが振動することで生じる波である」と考えられていたのです。

以上のようにして、17世紀ごろに主流であった「光とは、さまざまな色の粒子の集まりである」というニュートン流の粒子説は、ヤングらの干渉実験やその後の研究によって説得力を失い、「光とはエーテルと呼ばれる媒質を通して伝わる波動である」という考え方が、19世紀には物理学の主流となっていきました。

そして、19世紀から20世紀の転換期を迎えるころには、「あとは、このエーテルという謎の媒質が本当に存在するのか、どのような性質を持つのかを実験で確かめたい」という段階にまで議論が進んでいました。

そんな中、この「光の正体を探ろう」という物理学者たちの間に、激震が走りました。

この界隈に激震を走らせたのは、「相対性理論」で有名な物理学者アルベルト・アインシュタインです。

当時は、多くの物理学者が「光はエーテルを介して伝わる波である」と考えていました。

しかし、光電効果の実験(レナードらによる)を理論的に説明する上で、アインシュタインはこの常識に疑問を投げかけました。

彼は、光電効果を説明する理論を構築する中で、光は連続した波としてだけではなく、エネルギーの粒(光量子)としても振る舞うと考えるべきだと提案したのです。

このようにして、光は波としての性質と粒としての性質の両方を示す、不思議な存在であることが明らかになりつつありました。

光電効果の実験の内容と、そこからアインシュタインが導いた「光の新しい見方」については、次回の記事で詳しく紹介します。

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