「量子力学」という言葉を聞いたとき、あなたはどんなイメージを持ちますか?
「量子ってことは、電子みたいな小さい粒子の運動を調べる学問なのかな?」
「量子コンピュータがすごいらしい、という話だけ聞いたことがある。」
「シュレーディンガーの猫なら名前だけは知っている。」
「アインシュタインの『神はサイコロを振らない』という名言は聞いたことがあるけれど、意味はよく分からない。」
など、様々なイメージ、印象があるかと思います。
大学生向けの教科書では、ヤングの干渉実験やシュテルン=ゲルラッハの実験など、100年ほど前の実験の紹介から始まることもありますが、本記事では
「そもそも量子力学とは、どんな学問なのか?」
そして
「量子力学の世界を探究することで、私たちは何を得るのか?」
を紹介します。
ここで、初めに結論を述べておきます。
量子力学という学問を一言でまとめると「ミクロな世界の物理」です。
もう少し具体的に言えば、
「電子や原子など、目で見ることができないほど小さな粒子の振る舞いを、科学的に説明しようとする学問」
です。
このような紹介をすると「電子1つが動いたからって、だから何なの?」と言われることがあります。
たとえば「ボールが飛んでくると痛い」「蹴るとその方向に飛んでいく」ように、目に見える程度の大きさの物体の運動は、日常生活の中で簡単に確かめられます。
「大砲を的確に撃ち当てたい」という実用的な目的が、ニュートンらの時代に力学の発展を促したとも言われます。
では、私たちが目で見ることのできないような小さな粒が動くことには、いったいどんな意味があるのでしょうか?
実は、この「ミクロな世界の物理」では、「量子状態(情報)」を光子などを介して遠隔地に転送できる量子テレポーテーションや、粒子が本来通り抜けられないはずの障壁を確率的にすり抜けるトンネル効果など、私たちの日常感覚では考えられない独特の現象が現れます。
これらの振る舞いは「量子力学の扱うミクロの世界に独特の現象」という意味で科学的に興味深い話題だと思います。
また、量子力学の対象となる粒子の1つである電子が、どのような状態で、どれくらい自由に動けるのかを調べることで、様々な物性(物質の性質)を知ることができます。
例えば、電気の流しやすさ(金属・半導体・絶縁体のうちどれか)、磁石になりやすさ(強磁性体か、ほとんど磁石にならない常磁性体・反磁性体のうちどれか)といった性質に基づき、物質を分類することができます。
これらの物性は、物質中における電子の振る舞いによって決まります。
このことから、量子力学は物質の基礎科学である物性物理学を学ぶために必要不可欠な学問といえます。
他にも、量子力学は素粒子物理学の基礎理論として、クォークやレプトンといったより根源的な粒子の性質を理解するうえでも重要な役割を果たしています。
また、量子コンピュータや量子暗号にレーザー、さらには量子力学の知識を活用した材料設計など、近年では量子力学を活用した技術にも大きな注目が集まっています。
このように量子力学は、物性物理学や素粒子物理学といった基礎分野から、量子コンピュータやレーザー技術、材料設計などの最先端技術にまでつながる、現代科学・技術の土台となる学問なのです。

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