私たちの生活に欠かせない「光」ですが、その正体は何なのか?
この素朴な疑問は、長い期間にわたって多くの物理学者の間で議論されてきました。
17〜19世紀にかけて、「光は粒子か、それとも波か」という二つの説が対立し、多くの実験や議論が行われました。
「光=粒子説」は、重力の法則を打ち立てたことで有名なニュートンらが支持した説であり、17世紀から18世紀にかけて広く受け入れられていました。
しかし、18世紀~19世紀に切り替わる頃、ヤングが行った二重スリット実験により「光=粒子説」を否定するどころか、むしろ「光=波動説」を裏付けるような証拠が提出されました。
この報告により、「やはり、光は波動なのではないか」という考えが主流になります。
しかし、19世紀末から20世紀初頭にかけて、光に関する新たな実験結果が報告されたことで、またしても「光には粒子的な側面があるのではないか」と考えざるを得ない状況になりました。
その代表例が、19世紀末にヘルツやレナードらによって発見・研究された光電効果です。
その結果を説明するために、アインシュタインは光量子仮説を提唱しました。
今回は、光電効果とはどのような現象か、そしてその実験結果からアインシュタインが「光とは一体何者なのか?」という問いにどう迫ったのかを紹介します。
まず、光電効果とは、金属の表面に光を当てると、電子が飛び出してくる現象です。
光電効果では、ある値よりも振動数の高い光を金属に当てると、その光の強度がどれほど弱くても(光がどれだけ暗くても)、電子がほぼ瞬時に飛び出します。
また、同じ振動数の光であれば、光が明るくなるほど飛び出してくる電子の数(電流)は増えていきます。
一方、どれだけ明るい光でも、その振動数がある値よりも小さい場合には、電子はまったく飛び出しません。
これは古典的な「光=波動説」に矛盾する結果です。
仮に光が波動である場合、振動数の大小にかかわらず、十分に明るい光を当てれば、電子が飛び出してくると考えられるからです。
そこでアインシュタインは、「光のエネルギーは連続的に分布するのではなく、振動数に比例する小さな単位(光量子)としてやり取りされる」と考えました。
この1つの光のエネルギー単位は、のちに「光子(フォトン)」と呼ばれるようになります。
普通の粒子が動く際に生じる運動エネルギーは、粒子の質量と速さで決まります。それに対して、光子は静止質量をもたず、エネルギーは振動数(波長)で決まります。
したがって、ここで「光子」と呼んでいる粒子は、とても奇妙な粒子といえます。
そして、光が光子の集まりであると考えると、光電効果の振る舞いを自然に説明できます。
まず、光を金属に照射すると、ある1つの光子と金属中の1つの電子がぶつかります。
このとき、光子のエネルギーを電子が受け取ることで、電子が金属の外へ飛び出せるようになります。
ただし、金属中の電子が外に飛び出すには、ある程度のエネルギーが必要です。
その値よりも小さいエネルギーしかもたない光子とぶつかっても、金属中の電子は外に飛び出すことはできません。
光の振動数が高いほど光子1個あたりのエネルギーが大きくなるため、ある閾値を超える振動数の光では、金属中の電子が飛び出すためのエネルギーを獲得できます。
これが光電効果で見られる「高振動数の光なら弱くても電子が出る」という性質の理由です。
要するに、アインシュタインは光電効果をもとに、光を「光子」と呼ばれるエネルギー粒子の集まりとして捉えたのです。
アインシュタインのこの仮説は「光量子仮説」と呼ばれています。
これが提唱された当初は、この仮説はあまり受け入れられませんでした。
しかし、その後に行われた光電効果やコンプトン散乱などの実験により、仮説の正しさが実証されていきました。
これまで、本記事を含めた3つの記事を通して、「光とは何なのか?」という問題に関する2つの立場、すなわち (1) 光=粒子説 と (2) 光=波動説 を見てきました。
ヤングの二重スリット実験からは、光が波として干渉する性質をもつことが分かり、一方で光電効果の研究からは、光が光子という粒子として振る舞う側面をもつことが明らかになりました。
この話をまとめると、「光は粒子と波動の両方の性質を持ち合わせている」ことが分かります。
これこそが「光とは何なのか?」という問題に対する現代科学の立場から提出される回答です。
このような性質を直接確かめる実験として、「光子を1つずつ発射して行う二重スリット実験」が知られています。
詳しい説明はまた別の機会にゆずりますが、ここでは結論だけ紹介します。
光子をごく弱く一つずつ通すようにして二重スリット実験を行うと、光は「波」として空間に広がり、個々の光子はスクリーンのさまざまな位置にランダムに到達します。
多くの光子が蓄積されると、その点の分布が干渉縞に対応した模様をつくり上げていきます。
それにもかかわらず、個々の光子がスクリーン上で検出される瞬間には、粒子としてごく小さな一点にだけ姿を現します。
言い換えれば、光は単なる粒子でも単なる波でもなく、その両方の特徴を併せ持つ極めて不思議な存在なのです。
実はこのような特性は、光だけがもつものではありません。
電子もまた、粒子と波動の両方の性質を持ち合わせていることが知られています。
次の記事では、電子がもつ性質(物質波、ド・ブロイ波)について、原子模型の歴史とともにご紹介します。

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